「何度叱っても直そうとしない!」「子どもの問題行動が目につく!」
子育てでどうしようもなくイライラした時、どうしたら良いのでしょうか?
私もそんな問題に日々直面しているのですが、「代わりの行動を教える」「気持ちに理解を示す」「待つ」「聞く・考えさせる」といった、基本的な子どもへの対応方法を楽しく練習して身につけることが重要な気がしています。
子どもに思わず怒鳴りそうになっても、冷静に対処するためな『言葉』を練習しましょう。
「~できたね」
子どもが望ましい行動をしたら、「~できたね」とか「がんばって~したね」と、できた行動を言葉にしてほめた方が良いです。
「ほめる」というのは、「今の行動はよかったよ」とフィードバックするものと理解してください。
ちょっとの効果ですが、子どもはほめられればその行動が増えたり、定着する可能性が少し高められます。まあ、大人も同じですよね。
一般的には、子育て支援者が「ほめましょう」と言うと、超前向き思想で「みんな子どもをホメホメして、親も子どもも幸せ、最高の子育てライフを送ろうぜ!」と言っているように見られがちですが、そういうことが言いたいわけではない気がしています。
よい行動はほめて「今の行動はよかったよ」と伝えて、子どもの望ましい行動がちょっとでも増えていったほうが結果的に親御さんはラクになれますよ、効率的ですよ、ってことを伝えたいのではないかと思います。
※ほめ方には諸説あって、「結果をほめるor過程をほめるor行動しようとした気持ちをほめる」とか、「子どもにとってメリットがあることを伝えるor ママが感謝していることを伝える」など、いろいろな選択肢があります。
ポイント1 ほめる対象となる行動は「普通の行動」
例えばおもちゃを片づける際に、おもちゃ箱に投げ入れることが続いている子供がいたとしましょう。今もその子が電車のおもちゃをおもちゃ箱に投げ入れたのでママが注意しようとしているところです。では、子供に代わりの行動を伝えてください。
あなたはどんな言葉が出てきますでしょうか。
こう言えたらOKかと思います。
・「おもちゃはおもちゃ箱にそっと置いてね」
・「 おもちゃを片づけるときは、おもちゃ箱に置いてから手を離してね」
「ほめる」にはポイントが3つあります。
「おもちゃをおもちゃ箱に投げ入れる」という問題行動に対して、ママが提示した代わりの行動は「おもちゃはおもちゃ箱にそっと置く」ということです。
では、みなさんに質問です。「はい」か「いいえ」で即答してください。
そっと置くことは「すばらしい行動だ」と思いますか?
まあ、ほとんどの人の答えは「いいえ」ですよね。なぜって、物を片づける際にそっと置くのは普通のことですからね。
そしてここに、「叱ってばかりになる罠」があるんです。
まず、よくよく考えてみると、私たちが子どもを叱る、注意するのは、普通のことができていないときです。
椅子の上で跳ねる、鼻水を手の甲で拭く、悪いことをしても謝らない、などなど。
そして、私たちが子どもに教えるのは、普通の行動です。椅子の上では座るんだよ、鼻はティッシュでかむんだよ、悪いことをしたら謝るんだよ、と。「こういうふうにするとうまく生きていけるよ」と教えたいわけです。
問題行動の反対は望ましい行動です。そして、望ましい行動というのは、すばらしい行動ではなくて、普通の行動です。
大事なことなのでもう一度。
問題行動の反対の行動 = 望ましい行動 = 普通の行動
だから、「普通の行動」がほめる対象になります。特に、子どもが問題行動をして、私たちが子どもに代わりの行動(=普通の行動)を教えたのであれば、その普通の行動ができたときにはほめていきたいわけなんです。
けれども、普通の行動は普通であるがゆえに、親御さんにとっては認識しにくくスルーしがちです。
先ほどの例でいえば、おもちゃの片づけ方を教えたことが功を奏して、おもちゃを投げずにおもちゃ箱に片づけていたとしても、ママはうっかりスルーしてしまう可能性は十分にイメージできますよね。
一方で、子どもの問題行動はこちらが意識していなくても、目に入ればすぐに認識できます。見た瞬間にカチンときて、速攻で叱ることができます。その結果として、ほめる頻度は低く、叱ってばっかり、となっていきます。
でも実は、ほめることは簡単です。普通のことをほめるだけです。問題行動に対して代わりの行動を教えたのであれば、その行動ができたときに「~できたね」とほめれば、それでOKなんです。
ポイント2 望ましい行動はたいていの場合、すでにたくさん起きている
たとえば、子供が車の2列目のシートに座っているときに前の運転席を蹴るという問題行動をよく起こし、
ママがそのたびに「何度も言わせないで! 運転の邪魔になるでしょ!」と怒っているとします。
まあ、よくありますよね。何度もされれば、そりゃあイラつきます。それは仕方ない。では、ここで確認です。子供に提示したい代わりの行動は何でしょうか?
さっと浮かびましたか? 私の案は「足を下ろして座る」です。これも普通のことですね。
では、今の「運転席を蹴る」という問題行動を起こす場面について、ちょっとイメージしてみてください。
・車に乗って、車が走り出しました。子供はまだじっとしています。
・子供は飽きてきて、ママのいる運転席をリズムよく軽く蹴りはじめました。
・ママに何回か注意された子供は、運転席を蹴るのをやめて窓の外を見ています。
・子供が再び運転席を蹴ってママに注意されて、蹴るのをやめました。
・目的地に着いて、ママと子供は車を降りました。
どうです? 想像できましたか? ここで重要なのは、今イメージしていただいたのは、乗車中100%運転席を蹴り続けていたのか、ということです。
答えはNOですよね。
状況にもよりますが、「ずーっと問題行動をし続ける」とか、「毎回100%、問題行動を起こす」というのは結構難しいことなんです。では、問題行動を起こしていないときは何をしているかというと、「普通の行動」をしているわけです。
しかも、問題行動を起こしている時間はほんの一部で、大半の時間は普通の行動をしていたりします。
今の例でも、子供は車に乗った直後はじっと座っていました。ママに注意されなくても、望ましい行動はすでにできていたのです。
途中で運転席を蹴ることが何度かありましたが、それ以外の「蹴っていない時間」もたくさんあるわけです。
つまり、親の視点では問題行動がいやでも目につくので、問題行動ばかり起きているように見えるけれど、実は問題行動の反対となる普通の行動はすでにできているし、なんなら普通の行動のほうが発生頻度が高かったりするわけです。
ほめるチャンスはいっぱい転がっているんですよってことなんです。
くどいようですが、もう一度なぞりますよ。「運転席を蹴る」という問題行動へのアプローチを考えるとき、その反対の行動である「足を下ろして座る」がほめる対象となります。
そして、親御さん視点では「何度言っても運転席を蹴ってムカつく!」と思えるものの、実際には、望ましい行動である「足を下ろして座る」はすでに起きているし、「運転席を蹴る」よりも高頻度で起きている。
意識して見れば、ほめて肯定的にしつけをするチャンスはいっぱいあるんですよー、ってことなんです。
ポイント3 ほめることで問題行動は減る
先ほどの「運転席を蹴る」という問題行動への対策として、子供が「ママに言われたから足を下ろして座っているところ」や、「ただぼーっとして足を下ろして座っているところ」をたくさんほめていくとします。ほめられれば、その行動が増える可能性は少し上がります。
そして、もし狙いどおり「足を下ろして座る」という行動の頻度が上がると、相対的に「運転席を蹴る」という問題行動は減ることになります。
なんと、普通の行動をほめることで、問題行動を減らしたり、親御さんが叱る・どなる頻度を下げることができてしまうんです。
問題行動を直接消し去るのではなくて、すでにある普通の行動を増やして置き換えていくイメージです。
この「ほめることで間接的に問題行動を減らす」ということに慣れてくると、子供への対応はいくらかラクになります。そして、「叱るアプローチだけで問題行動を減らしていく」という対応は、実は難易度が高いってことに気がつきます。
ポイント1、2、3をまとめて考えると、ほめるしつけって、普通のことをほめればいいから機会はいっぱいあるし、ほめることで問題行動も減るし、ラクで効率がよくておいしいアプローチですよ、となります。
ここまでの話から、「叱る」と「ほめる」はどちらも子どもの望ましい行動を増やすという目的は同じですが、どちらに力を入れるといいかっていうと、「ほめる」になります。
叱る・注意する・諭すことも大事だし、「ちはっさく」ではその練習もいっぱいしますが、ドライに効率重視で考えると、叱る場合も含めて、青カードを使って子どもに肯定的にかかわって、望ましい行動ができる可能性を高めて、とにかくほめて終わる形にいかに持っていくのかということが大事になってきます。
もちろん、「ほめればすべてがうまくいきますよー」なんて言うつもりはないです。ほめても変わらないこともありますし、ほめたことで子どもが調子に乗って余計なトラブルが起きることもあります……。
そんなときは、ほめる子育てをしている自分を誇りに思いつつ、上手に気分転換をしてバランスを保っておいてくださいね。
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