【アニメ】「進撃の巨人」から学ぶ”争いが終わらないメカニズム”

2013年から始まったテレビアニメ『進撃の巨人』の放送がついに終了しました。

本作の物語は、単なる主人公が悪者を倒していくだけのヒーロー物語ではなく、重厚かつ複雑に入り組み敵と味方が入れ替わっていきます。その真骨頂ともいうべきか、最後に人類の敵として立ちはだかったのは、主人公のエレン・イェーガーでした。

主人公が最後の敵だったいうこの展開は、単に奇をてらったものではなかったですね。確かにこうならざるを得ない必然性を感じさせたのが、『進撃の巨人』という作品の凄味です。

果たして、『進撃の巨人』は何を私たちに伝えたかったのか。私は過去にも色々学ぶべき点を下記の通り記してきました。

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『進撃の巨人』から学ぶもの

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皆さん、こんにちは！Coach Kです！今日は私がハマってハマって仕方がない「進撃の巨人」から学んだことを皆さんに紹介していきたいと思います！こちらは2009年から連載が始まり、2021年4月に連載が終わりました。漫画だけでなく、アニメ、映画化もされており、老若男女問わず愛されている漫画です。単純に物語も面白いのですが、この漫画は学べるものが非常に多いです。人間社会と同じ問題がこの漫画では扱われている気がします。その問題は大きく分けて①差別②教育③戦争と私は考えます。詳しくはテーマ別に分けて考察を書いていきたい...

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【アニメ】「進撃の巨人」エルヴィン・スミスから学ぶリーダー論

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【アニメ】エレン・イェーガーから学ぶ「新時代の生き方」

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以前も紹介した私の大好きな「進撃の巨人」。今回はそのシリーズの主人公であるエレン・イェーガーから学ぶ「新時代の生き方」について紹介します。進撃の巨人内容をざっくり話すと、繁栄を築き上げた人類は、突如出現した天敵「巨人」により滅亡の淵に立たされました。生き残った人類は、巨大な三重の城壁の内側に生活圏を確保したが、城壁による平和を得てから約100年後、突如出現した超大型巨人によって再び人類に危機が訪れます。主人公エレンを筆頭に結成された調査兵団が、巨人を撲滅するために命を賭けて、外の世界に飛び出し...

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【アニメ】リヴァイ・アッカーマンから学ぶ部下の指導方法

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もう一点、見直してみて感じたのが「争いが終わらないメカニズム」が描かれていたと感じました。
人は何故争いごとを無くそうとしているのに、この世から争いはなくならないのだろう。
それは世界的にも、国内でも、庶民の私たちの生活領域でも必ずどこかしらで争いは起きているわけです。
進撃の巨人はそれらを伝えるため、描くためにもエレンは最後に敵となることが必然だったのではないかと思います。
なぜなら、人間はひとつにまとまるためには、共通の敵が必要だからだと思うのです。

敵味方の“視点”が入れ替わる物語
共通の敵が人々をひとつにまとめる？

敵味方の“視点”が入れ替わる物語

『進撃の巨人』は、視点を変えれば敵と味方が入れ替わり、絶対正義も絶対悪もないことを示しています。アニメのキービジュアルの変化がそれを端的に象徴しています。

テレビアニメ第一期のキービジュアルは、超大型巨人を見上げるエレンの背中が描かれていました。これに対して、The Final Seasonでは、エレンの巨人状態である進撃の巨人を見上げるライナーの背中が描かれています。立場が完全に入れ替わっているのです。

このThe Final Seasonで、エレンがライナーたちの国であるマーレを急襲する直前、「やっぱり俺はお前と同じだ」と告げていました。そして、「仕方なかったってやつだ」とも。

ライナーたちはエレンたちの住むパラディ島の人々をたくさん殺しました。それは、マーレという国で差別される存在であるライナーたちにとって「仕方ない」選択だったのです。そして、エレンもまた、仲間を守る選択のために「仕方なく」マーレの罪のない人々を虐殺することになったのです。

『進撃の巨人』は、このように物語の視点を入れ替えることで、善と悪はそれぞれの立場から見た相対的なものでしかないことを浮かび上がらせます。エレンたちは、家族や仲間を守るために戦います。ライナーたちも同様に家族や仲間を守るために戦っていました。お互いに戦わねばならない理由があるだけなのです。

「全ての戦争は防衛戦争である」という有名な言葉があります。はたから見れば侵略戦争であっても、表向きには防衛が口実となる。ライナーたちがパラディ島に攻め込んだのもエレンたちからすれば侵略だが、あれはパラディ島の「始祖の巨人」の力をマーレの防衛に活かすための軍事作戦だったのです。

エレンの行動も、結局は仲間の命を守るため。守るために仕方なく戦う、人類の歴史はそれの連続であるということを、視点を入れ替えることで説得力を持って描いているのが『進撃の巨人』なのです。

共通の敵が人々をひとつにまとめる？

物語の終盤、エレンはパラディ島の壁に隠された巨人の力を開放し「地ならし」を発動、人類全体の虐殺を始めてしまいます。この事態となってようやく、アルミンらパラディ島の勢力とマーレのライナーたちは手を組むことになるのです。

共通の敵が登場したとき、かつて争っていた者同士が手を組む展開は、とても心が燃えるものです。しかし、立ち止まって考えないといけないのは、どうして共通の敵が現れる前に手を組んで平和的に物事を解決できないのかということだと思います。

人間には確かにそういう側面があるように思います。国家の誕生も「共通の敵」から自分たちを守るためということがしばしばあるのです。イギリスが国家として形成されていったのは、デーン人などの外敵からの侵略に対抗するためという側面があるし、フランスにひとつの国家としての意識が生まれ出したのは、イギリスとの百年戦争が要因とも言われています。

日本の歴史を振り返ってみても、藩ごとに分かれていた帰属意識は、幕末の黒船来航で外敵の存在を意識してからひとつにまとまろうという気運が高まった結果、明治維新につながったと考えることができると思います。共通の敵がいると、人々は団結するもので、それがさまざまな国家の基盤になっています。だからこそ、軍事力による防衛機能は、国家にとって重要な機能に位置付けられるのだと思います。

エレンという共通の敵を前に、団結して絆が生まれたのはアルミンたちだけではなかったですよね。マーレの一般兵たちと差別される対象だったエルディア人たちが土壇場で殺し合いを回避し、手を取り合う様が最終話で描かれていました。ああした団結も共通の脅威があればこそでしょう。

しかし、共通の敵がなければ人はまとまることができないなら、やはり世界から争いは無くならないのではないでしょうか。ひとつにまとまらなければ平和にならない。しかし、ひとつにまとまるためには敵が必要、敵がいれば争いは起きてしまう。

これの無限ループが人類史なのだと『進撃の巨人』は描いたのではないでしょうか。

最終話のエンドクレジットには、ミカサたちが死去した遠い未来、争い続ける人類の姿が描かれていました。エレンは人類の8割を踏みつぶしたというが、それだけの悲劇を経験しても人間から争いを取り除くことはできなかったのです。

とても正直なエンディングでした。そんな人類史の皮肉をエレンはこの上なく体現しています。主人公が敵になるという展開が強烈な説得力を持っているのは、この作品にはそのような人類の持つ理不尽さが描かれているからです。

そして、そんな理不尽にもかかわらず、生きるに値するものがこの世界にはあると伝えているから『進撃の巨人』は傑作だと思います！