「とりあえず、やれ」「まずは手を動かせ」
部下育成ができないダメ上司は、教え方がわかっていない。こういう上司が大好きなのが「経験学習モデル」です。
「経験学習モデル」とは、
(2)反省
(3)洞察
(4)行動
という4つのプロセスに分かれた知識習得のモデルのことです。身をもって経験することで経験が知識に変わり、いろいろなシチュエーションで応用できる効果があると言われています。
ただし、この経験学習を額面通りにやるとどうなるか?
「つべこべ言わず、とりあえずやれ」
という指示になってしまいます。
料理で考えたらわかりやすいでしょう。
上司が作ったハンバーグを食べさせ、
「これと同じくらい美味しいハンバーグを作ってくれ」
「考えていないで、まずは手を動かせ」
と言われたら、普通の人はどうするでしょうか。
自分なりに考えて食材や調理具をそろえ、何度かハンバーグを作ろうとするでしょう。
一度もハンバーグを作った経験がないのであれば、上司と同じような味にはならないはずです。
すると上司から、
「そうじゃない」
とフィードバックというダメ出しをされます。
経験の次が反省だから、反省を促されることになる。次のプロセスが洞察であるから、
「もう一度、私のハンバーグを食べてみなさい。全然違うだろ」
と、洞察させます。
そして、
「もう一度、やり直しだ」
と言って行動させます。こんな「経験 → 反省 → 洞察 → 行動」という手順が、日本式の「経験学習モデル」であります。
このように社会人が何かを勉強するときは「まず経験が先だ」という考えの人が多いです。実際に経験が1番大事ではあるのですが、経験の積ませ方が良くないのです。とくに昔ながらの指導に慣れている人は、そうだろう。
ちなみに上司が「まずは経験から」と指導したがる理由は次の2つであると考えます。
(2)ダメ出ししてマウントを取りたい
経験学習3つのデメリット
もちろん、このようなやり方はとても非効率的です。経験学習は人材育成においてとても大事な考え方ではあります。しかしながら初学者が勉強するにはデメリットのほうが大きいのです。
経験学習のデメリットを3つ紹介します。
(2)考える力が養われない
(3)メンタルがやられる
前提知識がないのに、経験を先にしようとすれば、
「わからないことが、わからない」
という状況からいつまで経っても抜け出せません。
上司から、
「わからないことがあれば相談しろよ」
と言われても、「わからないことが、わからない」状況なのだから、どうしようもないのです。
そのため、いつまでたっても本質的な事柄を理解することができないのです。
前提知識や体系的なノウハウがないので、どう考えたらいいかもわからない。
「考えろ」「頭を使え」と言われても、正しく考えられないから
「言われないとわからないのか」
さらにダメ出しをされ続けることになります。こんな状態が続けば、誰だって自信を失ってしまいます。
前提知識がないことが問題なのに、自分の努力不足、頭の悪さに問題があると思い込み、
最悪の場合には「この仕事は、自分に向いていない」
と思い込むようになってしまいます。
社会人が勉強するうえで必ず頭に入れてほしいこと
ではどうしたらいいのか。先述した料理でたとえるなら、まずはハンバーグのレシピを手に入れたらいいでしょう。
レシピを手に入れること。調理具を買い揃えること。最低限の調理技術を習得すること。経験よりも先に基礎知識や基礎技術の習得です。もちろん、これらをキチンとやったとしても、美味しいハンバーグの味を再現できるわけではないですが。
しかし、
「これがおかしい」
とダメ出しをされても、体系的な知識や技術をすでに手に入れているので、正しく理解できます。
「わからないことが、わからない」という状況から抜け出せているのです。
そのため、
「これがおかしいということは、ひょっとして、こっちもダメですか?」
「そうそう。それもダメだ」
「ということは、最初にこういう準備をしたほうがいい、ということでしょうか?」
「そうだよ。俺が言いたいのは、そういうこと」
などと、効果的に質問ができます。
社会人が勉強するうえで、必ず覚えておいたほうがいいのが、最初に少し負荷がかかっても、そのテーマにおける体系的な知識を事前に見つけておくことです。数冊の本を読んだり、2~3回研修を受けたりすれば、だいたいの知識が手に入ります。
上司や指導者から、そのように勧められなくても自分で率先してやりましょう。
どんなに経験があっても、正しい知識(言葉)がゼロであれば、理解もゼロになる。言葉と経験を掛け算して理解が進む、と覚えておきましょう。
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