【教育】進学校に行けば幸せになれるのか?ほとんどの親が勘違いしているバイアス

ライフ

10歳からバスケットボールをはじめ、日本一を2度経験。
プレイヤーとしての夢は病気の影響により断念したが、「成長過程にいる男たちを、いっぱしの男にしてやりたい!」という思いを胸に、バスケットボールコーチしてます!また大学事務職員として教学マネージメントを担当。リアルな観点から「教育」「子育て論」「コーチング」などについて情報を発信していきます!

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・子供には幸せになってほしいから良い学校に通わせたい
・大企業に就職するためには一流の大学に行かせなければならない

なんて思っている親世代の方、多いのではないでしょうか。
しかし人生の「幸福度」は進学先で本当に決まるのでしょうか。
今日はイエール大学助教授の成田悠輔先生の研究データをもとに皆さんにその真意を説明していきたいと思います。

進学校に入っても頭は良くならない

成田先生は世の中の意思決定や資源配分に用いられているような、さまざまな社会制度を、アルゴリズムと捉えて、それをデータの力を使ってよりよい形に組み替えていくにはどうしたらいいかを研究されています。

「今の仕組み、ルールは本当に意味があるのだろうか」という素朴な疑問について、データ分析を使って問い直し、答えを出していくのです。専門としているテーマの1つが、教育政策です。

1つ、研究の具体例を出してみます。教育について、私たちが思い浮かべる素朴な疑問として「学歴に意味があるのか」があります。私たちは、有名で入るのが難しい進学校に入るために、お金も時間も注ぎ込み、一生懸命勉強をする。そんな大変な日々を送る中で、「こんなに頑張って勉強する意味があるのだろうか」と、誰でも1回くらいは思ったことがあるはずです。

そういう教育に関する素朴な疑問に、データを使って答えていきます。使用したのはアメリカの自治体が収集している、子どもの学力に関するデータです。ニューヨークには全米屈指のエリート高校がいくつもあり、入学には厳しい学力基準が課せられます。この選抜過程に注目し、ぎりぎりで合格した人とわずかに点が足らずに不合格になった人の「その後」を追いました。

合格点のボーダー付近の人たちは、ちょっとした偶然が合否を分けているので、学力はほとんど同じだと捉えることができます。そのため、彼らの将来の学力や進学先を比較することで「学歴の効果」を調べられるのです。

この調査によって、意外な事実が判明したのです。それは進学校に入った人と普通の高校に入った人の間で、その後の学力に違いがほぼなかったのです。「進学校に入ると頭がよくなるのではなく、頭のいい人が進学校に入っているだけ」という、厳しい受験勉強で時間を溶かしてきた私たちには残念すぎる結果です。

こうした研究によって、直感と反する結果が出ることもよくあります。データの分析によって、私たちが当たり前に受け入れている常識が間違っていることに気づくことができるのです。

常識を壊したうえで、社会制度や資源配分の仕組みをゼロベースで虚心坦懐(たんかい)に考え直していく。それが成田先生の研究の目指しているところです。

AIが選挙を変え、未来を変える

AIやデータを使ってつくり変える一例として考えられるのは、政治の「意思決定者」を決める選挙です。選挙制度は長らく根本的には変わっていませんよね。SNSでの選挙活動の解禁や一部地域での電子投票など、表面的な変化はありましたが、大枠の仕組み自体はそのままです。

選挙制度のような何十年も続いている社会の仕組みを時代に合わせてつくり変えるというのは、取り組んでいる人が少ないタイプの問題だと思います。

選挙制度は、私たちが何を求めているかというデータを投票という形で収集し、それを基に「どの政治家が議員になるのか」「どの政党が政権をとるのか」を決める仕組みです。これは目的設定を行うための「計算装置」と捉えることもできます。

この計算装置をAIに置き換えていくと、また違った未来が形づくられていくでしょう。社会的な合意形成を「自動化・機械化・プログラム化」しようという動きも少しずつ出てきています。たとえば「自律分散型組織」などの組織運営のインフラです。

今は、人間同士が会議で話し合ったり、交渉したり、裏で根回しをしたりして、どう意思決定が行われたのかがよくわからない形で進んでいくのが普通です。それをそのままAIやアルゴリズムに置き換えることで、今までブラックボックスだったプロセスを透明にしていく動きがあります。

成田先生には1つの予測があると言います。私たちが今、「選挙」と呼んでいるものとは違う民主主義の具現化が出てくるという予測です。選挙会場に行って、用紙に候補者の名前を書いて投票するという仕組みからがらっと変わった何かです。

今の仕組みだと、私たちが意思を表明できるのは、投票のときだけ。しかも「どういう政策を支持するか」ではなく、1人の候補者を選ぶという間接的な形でしか関わることができない。

しかし、今の社会ではもっとありとあらゆる場所で私たちの意思を集めることができます。

SNS上の政治に関する発信を集める。

日常会話を家電に組み込まれた録音機で収集する。

政治家の演説を見ている人がどう感じているか、表情のデータを取る。

世の中に散らばっている大量の意見や思想、考え方に関するデータを集約し、分析を行い、政治の方向性を決めていくのです。こうすれば、人間が介在することなく、私たちの意思を反映させた政策を行うことができます。

ただ、こういった仕組みの実現までには解かなくてはいけない技術的・倫理的・政治的な壁がたくさんあります。

そういった壁を乗り越えるためには、この問題に取り組む人がいろいろな領域からたくさん出てこないといけない。数十年から百年といった長いスパンで進めていく社会的な事業という感じでしょう。

未来の政治家は「猫」にとって代わられる

長い目で見ると、未来の民主主義に政治家の存在はあまりいらないのではないでしょうか。私は政治家は2つの役割を持っていると思っています。

1つはどういう政策を進めるかの意思決定をし、行政機関を使って実行していくという、実務家としての役割。もう1つは、人の前に出て、ある種のタレントとして活動し、何か起きたときには火だるまになるという、マスコット的な役割。

前者の実務家としての政治家の役割は、先ほどまでに見てきたようにだんだんAIやプログラムにとって代わられていくと思います。個人レベルでは、たとえば今もうすでに投資や保険の管理をアプリに任せていたりします。

それと同じことが、政治の世界でどんどん起きていき、人間が意思決定するものがだんだん減っていく。その結果、実務家としての政治家は必要なくなっていくという感じです。

そして後者のタレントやマスコットとしての政治家は、おそらく猫などにとって代わられていくと思います。

かなり真剣に考えていますが、猫が被選挙権を持ったらすごいと思います。SNSでの好感度の集め方とか、もう桁違いですから。SNSでの人気を独占している猫に勝てる政治家は、ほとんどいないのではないでしょうか。

政治家のマスコットとしての機能は人気投票そのものなので、知名度とPVを稼ぐものが勝ちます。実務はすべてAIとプログラムに任せて、愛嬌(あいきょう)を振りまいてさらに人気を集め、何かトラブルが起きたら、責任を取る。これが未来の政治家の姿になると思います。それが得意なのは人より猫かもとも思います。 

ドライな言い方をすると、歴史とともに、昔はあった役職とか職業とか役割がだんだん消えていって、機械やソフトウェア、ロボットに置き換わっている。それと同じです。

それでは、未来の世界で、人間の役割は一切なくなってしまうのでしょうか。 当然ですが、そんなことはありません。AIに仕事を奪われるなら、代わりに私たちは、まったく新しいポジションをつくり出していけばいいのです。

たとえば、ニューヨークからオンラインで日本にいる人と雑談をし、その様子をYouTubeで流すなんてことも私の仕事になっているわけです。こんな仕事は30年前には誰もやっていませんでした。

YouTuberやTikTokerといった仕事は、今でこそ名前がつきましたが、ちょっと前までは存在していなかった。昔の人から見れば遊んでいるようなものでしょう。しかし、今は仕事として認められていて、子どもたちがなりたい職業の上位です。

この流れは別に今に始まったことではなく、昔からそうなので、これからの私たちも、新しいポジションをつくり出し、「今はまだ名前のない仕事」に就いていくようになっていくでしょう。

たとえば、猫が政治家になったら、猫の秘書を人間がやればいいのではないでしょうか。

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