【子育て論】「大きな声で叱る」しつけは全くの逆効果

子育て

10歳からバスケットボールをはじめ、日本一を2度経験。
プレイヤーとしての夢は病気の影響により断念したが、「成長過程にいる男たちを、いっぱしの男にしてやりたい!」という思いを胸に、バスケットボールコーチしてます!また大学事務職員として教学マネージメントを担当。リアルな観点から「教育」「子育て論」「コーチング」などについて情報を発信していきます!

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ドイツのベストセラー『怒らないをやってみた子育てライフ』の著者で科学ジャーナリスト&メンタルヘルスの専門家ニコラ・シュミット氏は次のように言います。

「子どもを叱ってはいけないと言われますが、それはなぜでしょうか?  それは効果がなく、子どものためにならないからです」。

叱ることは今や多くの研究によって効果がないことが証明されています。
しかし、分かっていても子どもがぐずったり、言うことを聞かなかったりしたときにどうしても怒ってしまいますよね。そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

では、どうすれば叱らないですむのか?  簡単に紹介していきたいと思います。

子供へのストレス反応

私たちは子どもに、いい子でいてほしい、周りに迷惑をかけない人になってほしいと願うものです。
だから「お行儀よくしなさい、恥ずかしいでしょう!」と言うこともあるかと思います。

では、スーパーマーケットでよくあるケースを見てみましょう。

午後5時半、夕ご飯の材料を買いに子どもと一緒にスーパーマーケットに来ています。すると、棚に並んでいるぬいぐるみがどうしても欲しいと言って子どもが騒ぎはじめます。なだめても聞かないので、無理矢理レジの方向へ連れていこうとしますが、ついにスーパーの床にひっくり返って叫びはじめました。

横を通りすぎる年配の女性が「最近の親は子どものしつけもできないのね」と冷ややかな言葉を残します。スーパーの店員も、いらだちを隠せない表情でこちらを見ています(1日中働いて疲れているのでしょう)。恥ずかしさのあまり、顔が赤くなります。

羞恥心は大きなストレス反応を引き起こしますから、誰でもこのプレッシャーから一刻も早く解放されたいと願います。

大半の人にとって、午後5時半という時間帯は、その日の疲れがたまってきているころです。私たちのシステムも、すでに正常に動作していません。泣き叫ぶ子どものおかげで、さらなるストレスを感じます。

ストレスは、私たち自身の気質やそのときの気分によって異なりますが、こんな内なる対話を引き起こします。

・反応1.「かわいそうに。もうこんな時間だし、この子も疲れているんだわ」
・反応2.「恥ずかしい、まわりの人たちがどう思っていることか。早くここから立ち去らないと!」
・反応3.「この子はどうしてこんなふうに私を困らせるの?  いいかげんにして!」
・反応4.「まわりの人たちはきっと、親のしつけがなってないからだと思っているに違いない。今日こそは本気で叱らないと!」

この4つの反応にはそれぞれ意味があります。どのような意味があるのか見ていきましょう。

4つの反応の意味

・反応1.共感

子どもはわざと泣き叫んでいるわけでも、私たちを困らせようとしているわけでもないと考え、子どもの気持ちに寄り添います。これほど感情を爆発させるということは、本当に疲れているのでしょう。この状況で、子どもに協力を求めても無駄と考えるのです。
共感は、お互いの歩み寄りを成功させるための最初のステップです。子どもの気持ちを理解して、これ以上プレッシャーをかけず落ち着かせて、どうにかして家に帰りましょう。しかし次回はもっと早い時間に買い物に行くか、もしくはぬいぐるみを買わなければならないことを覚悟しなければなりませんが。

・反応2.逃走

子どもがそんなふうに振る舞うことを恥ずかしいと感じます。周囲の人たちは、子育てに失敗していると思っているに違いありません。隠れたくても隠れる場所がないので、とにかくその状況からすみやかに脱出しようと試みます。「明日の幼稚園のお弁当はリンゴなしだからね!」ときつく言いながら、泣き叫ぶ子どもを抱えあげ、商品が入ったショッピングカートを残してスーパーの外に出ます。

このような恥ずかしい状況には耐えられず、逃げだすことが優先されます。買い物は、明日あらためて出直しですね。

・反応3.復讐

子どもに恥ずかしい思いをさせられました。羞恥心があまりに重くのしかかってくるので、転嫁するかのように、子どもに恥をかかせます。他人からの評価や敬意が失われることを恐れて、ストレスの引き金をひいた「責任者」──つまり自分の子どもに責任を転嫁してしまうのです。
羞恥心やストレスから解放されたいという欲求があまりにも強いため、「どうしてそんなに行儀が悪いの?  いいかげんにしなさい!」というような言い方で、衝動的に怒りを子どもにぶつけてしまいます。つまり、不快な感情を子どもに押しつけることで、羞恥心やストレスから解放されようとします。

・反応4.攻撃

私たちは、通常モードから攻撃モードになり、子どもたちを厳しく叱ります。その際、「早く泣き止まないと……」「いますぐ謝りなさい、さもないと……」「すぐに立ちあがらないと……」というふうに、できるかぎりのプレッシャーをかけて、私たちが望む行動を強要しようとします。

私たちのストレスシステムは、いまやパワー全開です。攻撃モードに入っていますから、子どもを脅したり、叱ったり、腕をつかんで強く引っ張ったりすることもあるかもしれません。もはやまわりで起きていることなど目に入りません。
疲れた小さな子どもを気づかう心の余裕をなくして、ストレスのトンネルに入りこみ、あとになって後悔するような言動をしてしまうのです。後悔のあまり、そのいらだちをまた子どもにぶつけてしまうこともあります。
「あなたがスーパーであんなふうに泣き叫ばなければ、私だって腕を強く引っ張ることはなかったんだから!  自業自得よ!」と。

子供にとってのベストな反応

皆さんは4つの中でどれが優れた対応と思いましたか?

これらの反応は、どこからやって来て、どこへ向かっているのでしょうか。どの反応が、私たち自身、そして子どもにとってベストでしょうか。

・反応1.共感

群を抜いて優れた反応です。とはいえ、最も難しい反応でもあります。なお研究によると、冷静な対応をする親に育てられた子どもは、怒りを爆発させることが少ないそうです。

・反応2.逃走

できれば避けたい反応ですね。それでも、「このままではいけない」と気づき、状況を変えようとするだけでも本当に賢明なことです。
大切なのは、子どもに責任を負わせないこと。先に述べた例であれば、「あなたのせいでリンゴを買えなかったのよ!」などと言わないことです。子どもは何も悪いことをしていないのですから。買い物に行く時間が遅くなったせいで、子どもに負担がかかってしまったのです。その日の計画が悪かったのであって、その責任は私たち親の側にあります。

・反応3.復讐
・反応4.攻撃

ストレスを転嫁、あるいは外在化しようとします。そのことによって、ストレス状態をまわりの人にも伝染させてしまいます。自分の子どもが心の平静を失っているのを見て、ストレスを感じます。冷静に思慮深く、子どもが安定を取り戻すのを助ける代わりに、自分で自分にプレッシャーをかけているようなものです。

私たちがストレスのない生活を送るためには、子どもの行動を変えなければならないと考えます。子どもが行儀よくふるまうようになってはじめて、親も気分よく過ごせるという理屈です。なぜなら、親の言うことを聞く子どもを育てる親こそが、「よい親」だととらえるからです。

子どもを説得できてこそ、親としての自分に価値があると考えます。そのために私たちは、恥ずかしい思いをさせたり、脅したり、叱ったり、プレッシャーをかけたり、攻撃したり、あらゆる手段を尽くして子どもを心の安定した状態に戻そうとします。

叱られた子供がおぼえること

攻撃性には受動的な姿をしたものもあります。たとえば、子どもに対する愛情の欠落、無関心、無視などです。このような行動が子どもの心を不安定にすることは、過去のさまざまな研究によって証明されています。

それでも、「私が大きな声を出せば、うちの子は静かになりますよ?  ちゃんと言うことを聞きますけど?」という親御さんがいます。それに対する答えは、イエスでもありノーでもあります。

なぜなら、叱られる恐怖から静かになったとしても、その子は有益なことを何ひとつ学んでいないからです。自分の感情や気持ちをコントロールすることを学ぶ代わりに、おさえつけることを覚えます。

けれども、叱られたときに抑圧された感情は、次の機会にふたたび頭をもたげます。言い換えれば、けんかや号泣、心を閉ざすといった反応(どんな反応を示すかは、子どもの気質によります)がふたたび起こることが容易に想像できます。

親というものは「自分や祖父母、学校や幼稚園の先生に向けて私たちが作りあげたイメージどおりに子どもたちがふるまってくれることを願っている」のです。しかし、私たちは、自分の家族にとって何が本当に大切なのか、自分たちで決定することができます。

自分の内側、そして外側からの圧力を理解して認識できれば、スーパーマーケットで子どもが泣き叫んだときにどう反応すればよいのか、自分の頭で判断できるようになるはずです。

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