何度注意しても忘れ物を繰り返してしまう子は、どうすれば忘れ物がなくなるのでしょうか。
ほんの数秒前に伝えたことを忘れるなんてことは、皆さんの家庭でもザラにあるのではないでしょうか。
そんな中、子育て・教育コンサルタントの中曽根陽子さんは、「『どうして忘れるの!』と怒ってはいけない。子どもの行動を変えるためには、考える機会を与えることが大切だ」と言います――。
「どうして」と聞く限り子どもの行動は変わらない
「子どもには、何か困ったことが起きても、自分で考えて解決できるようになってほしいと思っているのに、うちの子すぐに私にどうすればいいのか聞いてくる」
「どうすればいい?」という問いに対して、「自分で考えてみたら?」ということは良いことなのでしょうか。
考えて解決する力は、探究力と深いつながりがあります。何かを探究する上で、問題はつきもの。壁にぶつかったときに、それをどう解決するか、それを考える力がないと、探究対象を深めることはできません。
でも、実は日常生活の中に、子どもの考える力を育てる機会はたくさんあります。
しかも、子どもの困った行動の中にその種があるのです。
忘れ物が多い原因は親のある行動
たとえばお子さんが、忘れ物が多いとします。何度も言っているのに、直らない。今日も、体育があるはずなのに、体操服を玄関に置き忘れている。そんなとき、皆さんだったらどうしますか?
もしかしたら、学校に届ける? あるいは帰宅後を待ち構えて「まったく、どうしてあなたはいつも忘れるの! あれほど、夜のうちに用意しなさいって言ってるじゃない」と怒っているうちにだんだんボルテージが上がって、「そんなだらしない子は、ろくな大人になれないわよ」と呪いをかけたり、「今度忘れ物したらおやつ抜きだからね」とバツを与えたり……。でも、それで忘れ物をしなくなったという話はあまり聞きません。
だって、忘れ物をした子どもの気持ちになって考えれば、「どうして」と言われても、忘れたから忘れたのであって、理由なんて答えられませんよね。そもそも、理由が分かっていたら、忘れ物はなくせるはずです。この「どうして」とか「なんで」という問いかけは、過去に向かって原因を追求する言葉。つまりマイナスの言葉かけです。
そして、言われた人は責められたと感じ、言い訳を考え始めてしまうのです。
忘れ物をゼロにする魔法の言葉
とはいえ、「忘れ物をするのは仕方ない」とばかりも言っていられません。
では、この問題を解決するには、どうすればよいのでしょう。
それは、「て」を「たら」に変えることです。
「どうしていつも忘れ物をするの!」と怒る代わりに、「どうしたら忘れ物しなくなるかな」と聞くということです。
「どうしたら」というのは、未来に向かって解決を促す質問なので、「どうしたらいいかな?」と聞かれると、頭の中では自動的に「どうしたらいいかな」と小さい子どもでも考え始めます。それがまさに、思考力を育てていくチャンスなのです。
そして、具体的な解決方法を考えられるように促し、自分で決められたら(判断力が成長)、それを言葉にする(表現力が育つ)。しかも、自分で決めたことはやる可能性が高いから、お母さんの困りごとも解決する可能性が高くなります。
問いかけひとつで成績も上がる
もちろん1回ですべてが解決するわけではありません。子どもに解決策を考えさせるには、親の忍耐力も必要です。
でも、この忘れ物問題一つとっても、こういう解決を促すアプローチをするかしないかは、大きな差になります。
子どもがテストで同じ間違いをする、思うように成績が伸びない……そんなときも、「どうして」と責めるのではなく、「て」を「たら」に変えて、お子さんに考える機会を与えてください。この話は、中学受験の保護者講演会でもお話しているのですが、実際に親子関係がよくなり、子どもの成績も上がったと喜ばれているのでぜひやってみてください。
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