コービー・ブライアント 失う勇気〜最高のになるためさ!〜

NBA

10歳からバスケットボールをはじめ、日本一を2度経験。
プレイヤーとしての夢は病気の影響により断念したが、「成長過程にいる男たちを、いっぱしの男にしてやりたい!」という思いを胸に、バスケットボールコーチしてます!また大学事務職員として教学マネージメントを担当。リアルな観点から「教育」「子育て論」「コーチング」などについて情報を発信していきます!

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皆さん、こんにちは!Coach Kです!
今回はオススメの本、紹介シリーズ第3弾です!
第一弾はこちら➡︎「生き方」
第二弾はこちら➡︎「僕が親ならこう育てるね」

先日の記事でもコービーブライアントについて書きましたの皆さん覚えてくれてますでしょうか。
➡︎現役NBA選手も継承する、故コービー・ブライアントの『マンバ・メンタリティ』

知っている人もいるかもしれませんが、彼の自伝が残されています。かなりの分厚い本でなかなか読むの大変そうと思うかもしれませんが、彼の生涯や魅力がいっぱい詰まっている本です。是非皆さんにも読んで頂ければなと思っておりますので、簡単に紹介していきたいと思います。

NBAで最も好き嫌いが分かれた選手

NBA人気を世界中に広めたバスケットボールの神様マイケル・ジョーダン、その”ポストジョーダン時代”を払拭した第一人者コービー・ブライアント。しかしコービーは世界で最も愛され、最も憎まれた選手でした。コービーはプレイにおいても、コート外の生き様においても毀誉褒貶の激しい人物だったのです。コービー・ブライアントと聞いて、皆さんはどんなプレイを思い浮かべるでしょうか。ペネトレイトからのダンクシュート、相手の視野から消えるほどの素早いターン、クイックネスで相手を振り回してから放たれる異様に滞空時間の長いジャンプショットなどなど挙げればキリがないでしょう。もちろんライバルたちを苦しめたディフェンス能力に目が行くバスケット通もいるかもしれませんね。

圧倒的なスコアリング能力に恵まれたコービーは、ずば抜けた才能を持つ複数のプレイヤーが“チームプレイヤー”として機能する現代的なNBAにあって、最後の「フープに向かってしかプレイしない」プレイヤーでした。その圧倒的な得点力は、彼を嫌う人が必ず挙げる「セルフィッシュ」という弱点とつねに二律背反。コートを支配し、チームの総得点のほとんどを稼ぎ出せば出すほど、“アンチ・コービー”は彼を攻撃するというパラドックスが起きました。またどの相手に対しても徹底的に精魂つきるまで挑むマンバ・メンタリティは多くのライバルチームや、そのファンにため息をつかせるほどの凄まじさでありました。

「ザ・マン=最高の男」であることを求め続けた男の物語

700ページに達する本書を貫くキーワードをひとつ挙げるとするなら、それは「ザ・マン」かなと思います。著者のローランド・レイゼンビーは、コービーと、彼の父で、元NBAプレイヤーのジョー・ブライアントの親子二代にわたる「ザ・マン=最高の男」への挑戦を掘り下げています。

『ジョー・ブライアントのキャリアにおいて「頼りになる男とは呼べない」というフレーズは、絶えず付きまとうことになり、そしてその息子はその逆を言われることに命を注ぐことになる』

優れたプレイヤーでありながら、同時代の「ザ・マン」であったマジック・ジョンソンになれなかったジョーと、その呪詛を引き受けながら登り詰めていく息子のコービーという大河ドラマ的展開を読み解けば、彼のプレイを「セルフィッシュ」のひと言で片付けてしまうことがどれほどもったいないことかわかるはずです。本書で描かれる家族を巡る物語は、単に親子鷹、サラブレッドの成功譚にとどまらず、時に物議を醸した彼の振る舞いのエクスキューズにはならないにしても、常人には想像し得ないプレッシャー、多くを期待され、手に入れたがゆえにおきる身近な人との軋轢も、多くの証言を得るという手法で描写されています。
父・ジョーに続いてコービーをある意味「縛る」ことになる“神様”マイケル・ジョーダンへの眼差しも面白いです。“ポスト・ジョーダン”の十字架を背負いし者は数知れないが、ジョーダンが完成させたプレイスタイルを先鋭化させ、神がコートから去ったあとも神の幻影から逃げることなく真っ向勝負を挑み切ったのはコービーだけだったのではないでしょうか。

本書から伝わってくるのは、コービー・ブライアントの目標に対して真っ直ぐすぎるくらい突き進む姿勢です。その姿勢は覚悟という言葉で表現するのも軽すぎるくらいで、何かに取り憑かれているのではないかとすら思います。狂気の世界です。
ただ、あまりにも成功することに取り憑かれるあまり、数多くのトラブルを巻き起こします。チームメイトのシャキール・オニールとの関係、性的暴行疑惑、両親との仲違い、そして妻との離婚騒動など、コービー・ブライアントが成功に向けて努力を続ければ続けるほど、周囲の人を巻き込んでいきました。

明るい光は、暗い影を伴っている。その事を本書は読者に突きつけます。

新時代を迎えたNBAに残した強烈なメッセージ

アイソレーションからの1on1が減り、より確度の高いシュートセレクションを重んじるようになった現代のNBAを見ていると、その是非を問うより前に隔世の感を禁じ得ないもの。平均値で言えばプレイヤーの質は間違いなく上がっているし、圧倒的才能を持ったプレイヤーたちがハイレベルな攻防の中、キャッチアンドシュートでテンポよくゴールを決めていく姿も小気味いいですね。

それでもコービーが引退を表明した2015−16シーズンの“引退試合”が多くのファンの心を揺り動かしたことは紛れもない事実だと思います。

本書の訳者である大西玲央氏も、あとがきの中で次のジョーダンであるコービーに「嫌い」から入ったと打ち明けつつ、『アキレス腱を断裂した試合、そして引退試合では感動すら覚えました』と引退試合のインパクトを語っています。
キャリア最終戦で60得点。パスを求められても頑なに拒否し、「セルフィッシュ」と罵られてもフープに向い続け、20年在籍したレイカーズを5度のチャンピオンに導いた男の最終戦としては、これ以上ない幕切れでした。そしてそれは、「ザ・マン」を目指すプレイヤーが絶滅危惧種になりつつあるNBAに対する強烈なメッセージだったのかもしれません。

物語の最終盤、レイゼンビーは引退試合を終えたコービーの心境をこう代弁しています。

『キャリアを通してなろうとしていたすべてをコントロールする存在、「ザ・マン」にようやく完全になることができたのだ。彼はすべてに対する答えを見つけることができたのだ。ただひとつ最も重要なものを除いて』

ポスト・ジョーダンの時代に傑出した存在感を見せた男は、現役最後の試合でポスト・ジョーダンという命題への答え、自らのキャリア、半生に対して満額回答を出したように感じます。

未読の方は『ただひとつ最も重要なものを除いて』というフレーズが気になるだろうが、これは半生への答えを見つけたコービーが人生を懸けて見いだしていくもうひとつの答えとも関係しています。本書の筋としても重要な要素として描かれているので、ここは読んでのお楽しみということで。
スーパースターのありのままの姿を伝えてくれる貴重な1冊です。ぜひ読んでみてください。

KOBE BRYANT THE MAMBA MENTALITY HOW I PLAY [ コービー・ブライアント ]

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