学校教育の一環として存在する部活動は、体力・技術の向上を図ることや、異年齢との交流の中で育まれる人間関係を図る場として大変有意義なものといわれています。それだけでなく、机上では学べないことも多々あり、「子供のため」と教育的文脈で語られることが多いのです。
しかし近年、その部活動における現状課題の深刻化が表沙汰されるようになりました。本来部活動は学習指導要領の位置づけでいけば、あくまで参加は「自主的」であり、強制力はないのです。
ほとんどの学校では部活動への加入が半強制的であり、それらが原因してか主体的、能動的に取り組む子が少なくなってきていると言われています。またそれらを務める教員は土日を返上し、部活動に携わる事で肉体的・心労的疲労は大きく、労務管理でも大きな問題を抱えているのです。
それら日本の部活動を「ブラック部活動」と表現した名古屋大学准教授の内田良の一冊。
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部活動を通じて様々な経験をしてきた私からは驚きの内容でした。
今日はその「部活動」の是非について考えていきたいと思います。
部活動の現状課題
先にも若干触れましたが、有意義な人間形成を図る場として位置づけされている部活動は様々な問題を抱えています。まずはその現場の問題を「ブラック部活動」の内容をもとに触れていきたいと思います。
部活動は教育課程外なのに・・・
部活動は教育の一環ではありますが、しかしそれは教育課程外の付加的なものであり、正規の活動ではないのです。部活動はあくまで自主性であるため、必ず部活動に参加する必要はないのですが、実際には強制加入となっている場合が少なくありません。実施した調査によると、2008年の時点で部活動の参加を生徒に義務付けている学校が、岩手県では 99.1%を占めている。県内ほぼすべての中学校で、全員が強制的に部活動に加入していることになる。そして岩手県ほどではないにしても、静岡県では 54.1%、香川県では 50.0%で、半数を超えています。
部活動顧問の大半は素人
教育課程外である部活動は本来先生が関与しなくていいものです。しかし何故か日本の学校では強制的に学内の教員により顧問が勤めることがほとんど。
更にはほとんど専門分野ではない顧問を務める、いわば素人が大半でしょう。
教育課程外であり、更には専門性のない部活動に大事な土日を奪われるのは大変苦痛なはずです。教えられる側の生徒たちも面白くないはずです。こんなイレギュラーな状態が蔓延している部活動。
授業で例えるなら、「数学の授業を国語の先生が教えている」現状に何も思わない文部科学省の頭の悪さに感動すら覚える現状です。
教員側の悩み
若干触れましたが、教員の側にも、部活動のために休日も勤務になり休息が取れない、経験の無い部活動の顧問になってしまい不安があるなど、部活動に対する悩みがあると思います。
そしてもともと日本の教員は勤務時間が長すぎると言われています。そのため、教員が休日に休むことができないと、休息不足や心身の疲労などへつながるのは間違いないはずです。
生徒側の悩み
部活動に対する生徒側の悩みとしては、過剰な部活動により毎日が忙しくなり過ぎ、休息が十分とれず、健康や学業などに影響を及ぼす、ということがあるかもしれません。
特に中学生は成長期にあたるため、十分な休息はとても重要です。そのためには、朝練を行わない曜日を作る、週に2日以上部活動を行わない日を作る、などの取り組みが必要となるかもしれません。
特に運動部に所属している生徒の場合、朝早くに朝練があり、授業を受け、放課後部活動をし、夜に塾へ行くなど、多忙なスケジュールになることも多いと思います。そのため、十分に休息を取ることができず、学業にも身が入らない状況があります。過剰な部活動により長時間拘束されることが続くと、学業との両立が難しくなることも考えられます。
海外の部活動
もちろんアメリカにも部活動はありますが、様々な点で違いがあります。
アメリカではスポーツをシーズン制で行います。秋、冬、春それぞれのシーズンごとにそれぞれ別のスポーツに取り組む、というのがアメリカの高校でのスポーツ活動です。そのため、特定の部に所属するという考え方はなく、部ごとにレベルに合わせたチーム分けをされるので、自分の経験やレベルに合わせてスポーツを楽しむことができます。
また基本的に指導者は外部コーチであり、教員が勤めることの方が少ないと言われています。
イギリスの場合、スポーツ自体は盛んですが、日本のような部活動はありません。
放課後に公共のスポーツ施設を利用したりしてスポーツを楽しんだり、私立の学校がスポーツ施設を充実させたりすることはありますが、全体として日本のように部活動が盛んではないと言われています。
中国の場合、地域や学校によって違いはありますが、部活自体が無い学校が多いなど、日本のように部活動に力を入れていません。
学校の部活動というより、中国では学校外のスポーツクラブを利用することが多いようです。
部活動はなくすべきなのか?
結論から言うと私はなくすべきではないと思います。
半強制的で参加するようになってきている部活動。しかし考えてみれば義務教育自体も大人が勝手に決めたもの。勉強する上で必要のない校則なども言ってしまえば強制ですよね。学校という現場では強制というのはいつも存在します。曖昧な定義にせず、別に強制的にしてもいいのではないでしょうか。
部活をしていた頃を後悔している人はいるでしょうか。やりたくもないことをやるぐらいなら勉強の時間に充てたいという意見も聞こえてきそうですが、たかが1日2時間〜3時間程度の時間を運動する時間として考えれば、それはリフレッシュ効果にもつながるのではないかと考えます。
クラスメイトというコミュニティは横の関係構築しかできませんが、部活には先輩後輩との繋がりができ、縦の人間関係の構築も経験できます。それはこれからの社会を生きる上で、大事な経験値になるはずです。
部活動という存在があったおかげで大谷翔平選手のような世界的スターも現れているわけです。これから輝くかもしれない可能性を秘めた子がたくさんいる部活動の世界を奪うことはできないでしょう。
しかし現場の学校の体制で運営される部活動は早急に改善しなければならない点が多々あると思います。まだ日本は全体的に海外サッカーユースチームのようなクラブ活動の整備が十分ではありません。競技性も高められる、専門家が指導してくれる、なおかつ教育の現場の負担が減る利点があるクラブ活動の体制は確立するべきでしょう。それら体制が整えば、学校の部活動というのは学習指導要領の位置付けにフィットするのかもしれません。
体育会系の文化はもういらない
体育会系の人は上下関係を重んじるので、その後の就職なんかも有利だと思います。商社やマスコミの会社にも体育会系の人が多いです。それは厳しい上下関係を生きてきた経験と、理不尽に対する免疫があるからでしょう。上からの無茶振りにも耐えますし、それを疑うことをしない人もいます。
しかし一点気になる点としては、体育会系で養われる「忍耐」が、自分自身にだけ向いている場合は無害なんですが、他人に押し付けてしまうと、いわゆる「パワハラ」になります。
上からの重圧に自分が耐えるのは勝手にしてって感じですが、自分もそういう経験をしてきたからと言って、「我慢したから、次はやり返す」というように考えてしまうのはどうかと思います。
日本人は我慢が好きな人種です。そういったパワハラも我慢すればいいと勘違いしてしまいますが、これは決してよくないことです。
体育会系が偉いというヒエラルキーが良くないですね。そういえば一時世間を賑わせた日大の人も体育会系でしたね。大学のトップが「相撲のことしかわからない」って・・・。でもこれが日本の縮図であるとも、思うんです。早く改善してほしいですね。
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