鳥山明の漫画『ドラゴンボール』で登場する戦闘民族サイヤ人の王子のベジータ。
主人公孫悟空のライバルでありながらも永遠に勝つことができない、最高のかませ犬。
「誇り高きサイヤ人の王子」という絶対的なプライドを掲げながらも孫悟空には永遠に勝てないのですが、それでも諦めずに鍛錬を続けるその姿勢は個人的に好きです。めちゃくちゃ不器用だったベジータがブルマから「愛」を学び、日々変化していく姿も非常に魅力的ですよね。
ベジータのプライドと自信だけは異常なまでに高く、命よりもプライドや面子を優先するレベルです。
作中においては、そんなベジータの過信や慢心、傲慢さがしばしば地球にピンチを招いてきました。
そんなベジータほどとはまではいかなくても、現実世界において、プライドが高く自信過剰な人物がいると思います。
自信を持つことは礼賛されていますが、近年の心理学の研究では、自信やプライドは長期的に人生を不幸にするという研究も数多く存在しているのです。
そこで今回は、プライドの高いアニメキャラクターの代表、ドラゴンボールのベジータを題材にし、過剰なプライドや自信のデメリットとその対策を解説していきます。
ベジータとは
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惑星ベジータの王子。惑星ベジータはフリーザによって滅ぼされており、フリーザの配下として様々な惑星で破壊や略奪を繰り返していました。
フルネームは「ベジータ4世」で、身長164cm、体重56kgと以外に小柄な設定。
ナッパからは、「惑星ベジータの名前をもらうほどの天才戦士」と評されており、持って生まれた潜在的な戦闘力で階級が決まるサイヤ人の中で、上級戦士はベジータと父親であるベジータ王(ベジータ三世)とされいています。
スカウターの通信で地球上のドラゴンボールの存在に気づき、「永遠の若さと命」を手に入れるためにナッパと地球を向かうこととなります。
王子という出自、そして生まれついての能力の高さもあり、その自信とプライドの高さは異常なほどです。
他人の指図を受けることを極端に嫌う性格で、フリーザの配下でありながら、もともとフリーザのことを敬っておらず、自分勝手でした。
エリート意識が非常に高く、最下級戦士の生まれでありながら、地球での修行を通して強くなった孫悟空に対しては、強烈な競争意識、ライバル心を燃やしています。
過剰なプライドと自信の弊害
「WILLPOWER 意志力の科学」で有名なロイ・バウマイスター博士の研究において、「根拠のない自信を持った生徒」と「自信をなくした生徒」の成績を比較した際には、「根拠のない自信を持った生徒」の方が成績が悪くなるという結果がでています。
これは、現実よりも能力があると勘違いした結果として努力をしなくなっていうことが起因しています。(過信)
ロンドン大学の世界的な心理学者のトマス氏によると、実際の能力と自信との相関関係は薄く、ほとんど無関係なレベルだったとしています。
実際にいつくかの研究で、自信が低い人ほど他人の批判を受け入れる傾向があり、自信が高い人よりも能力のつくスピードが速いことが示されているそうです。
2011年のカリフォルニア大学の研究によると、自信が高い人ほど攻撃的で差別的な傾向が高かったというデータもあります。
自信の高さが、悪の3大気質ダークトライアドの一つである、ナルシズムに結びついてしまうのです。ナルシズムは、強い自己顕示欲や支配欲、自己中心性を特徴とした人格障害の一種です。
過剰な自信は、自身の能力を実際以上に高く見積もり、自分が特別な人間であるという妄想を生み出します。妄想が傲慢な精神を作り出し、自分以外の人間を見下し冷遇するようになりますので適度な自信に留めましょう。
ベジータにみる過剰なプライドと自信の弊害
上のように過剰な自信やプライドには大きな弊害があります。
サイヤ人の王子として非常に高いプライドをもつベジータ。プライドの高さからくる傲慢さや慢心が作中の様々なシーンで散見されます。
これからベジータにみられる過剰なプライドと自信の弊害を解説していきたいと思います。
フリーザー編の舞台はナメック星。不老不死を画策するフリーザ軍と、ベジータ、悟空陣営の総力戦。
元々フリーザ軍の一員だったベジータは悟空との死闘を経てパワーアップし、かつては実力で及ばなかったフリーザ軍幹部のザーボンを圧倒します。
追い詰められたザーボンがパワーアップの変身をほのめかすと、自分の力を過信し、敢えて変身の時間を与えてパワーアップさせます。変身をしたところで自分には及ばないと過信していたベジータ。
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結果、ザーボンのパワーアップはベジータの想像を遥かに超えており、ぶっ飛ばされてしまうのでした。
セル編は、未来からきた人造人間セルから地球を守る物語。
スーパーサイヤ人への変身に成功したベジータは、人造人間の生みの親ドクター・ゲロを圧倒します。窮地に陥ったドクター・ゲロは、人造人間17号・18号を起動させるために研究所に逃げ帰ります。
人造人間の脅威から地球を守ることを優先するトランクスやピッコロは、17号・18号を起動前に破壊しようとするが、スーパーサイヤ人となり自分が無敵になったと勘違いしたベジータは、トランクスやピッコロを妨害して、自らの戦闘欲求を満たすために、みすみす17号・18号の復活を許します。
そして、復活した18号にボコられ、腕をへし折られ、プライドもズタボロにされます。こうしてベジータの慢心によって地球はさらなる危機を迎えることになります。めちゃくちゃアホすぎて笑ったのをよく覚えています。
未来からやってきた人造人間セルに対抗するため、精神と時の部屋で修業を重ねてパワーアップしたベジータ。第二形態となったセルをそのパワーで圧倒します。そして、追い詰められた第二形態のセルは完全体への変身をほのめかすと、自分を過信したベジータは、攻撃をやめてセルに変身の時間を与えます。
賢明な未来トランクスがベジータを諫めて、とどめを刺すように促すも、ベジータはトランクスをぶっ飛ばしてしまいます。
そして完全対となったセルに、ベジータはなすすべもなくボコられてぶっ飛ばされます。
ベジータの慢心がセルを生き長らえさせ、最大のライバルである孫悟空の死なせることにつながるのです。
過去の戦いから何も学ばないベジータなのでした。
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敵を舐めてかかり、窮地に陥るというのが過信者のお決まりパターンです。
自分の実力に絶対的な自信をもつベジータ。それゆえに、敵を侮り、想像以上のパワーを有した敵にぶっ飛ばされるというシーンがよくありましたね。
大切なセルフコンパッション
以上述べてきた通り、過剰なプライドや自信には大きな弊害があるのです。
人生の幸福において必要なのは、過剰な自信ではなく自分を許して自己受容をする、セルフコンパッションが大切であると近年の研究で明らかになってきています。
セルフコンパッションについて、組織心理学者のターシャ・ユーリックは著書「insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力(英治出版 2019)」にて下記のように述べています。
自己受容は、自分についての客観的な事実を理解し、その自分を好きになろうと決めることだ。完璧であろうとするのではなく、自己受容する人々は、自分の不完全さを理解し、許すのである。
引用:ターシャ・ユーリック『insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』(英治出版,2019,147項) p147
ベジータも終盤になるにつれて、性格に変化が見えてきます。次第に悟空を認めるような発言を作中で見せるようになります。セル編ではすでに「あの野郎は天才だ」と発言をしています。
最終的には、「がんばれカカロット お前がNo1だ」という発言を、非常にすっきりした顔で発言できるまで至ります。(作中屈指の名シーンです。)
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初めて悟空を認めた瞬間!#DB30th #ドラゴンボール pic.twitter.com/AgmhtQUlxR— ドラゴンボールオフィシャル (@DB_official_jp) November 30, 2016
ベジータはその異常なまでのプライドの高さと自信過剰っぷりで、ドラゴンボール物語を大きく動かしてきました。
その愚行には多くのは読者・視聴者が、突っ込みを入れたことでしょう。
上述のように、過剰なプライドと自信は長期的な人生に影をおとします。初期ベジータのように自信過剰に陥らないように気を付け、セルフコンパッションを身に着ける努力を重ねていくようにしましょう。
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